自民党の総裁選挙に立候補した議員たちが、公約に憲法改正を挙げています その中身は、緊急事態条項を盛り込むことと、自衛隊を憲法9条に書き込むことです。緊急事態法は、かつてヒトラーが率いたナチスの全権委任法と同じく、政府が緊急事態を宣言すれば、閣議で政策を進められるようになります。
そして、国民の権利は大幅に制限されることが容易に想像できるものです。
また、総裁選立候補者の一人である小泉新次郎氏は「災害などで国民の命や生活を守っている自衛隊を憲法に書いてないのはおかしい」などと述べていました。しかし、憲法に書いてないことで、災害支援などに支障があるのでしょうか。憲法に明記すれば災害支援でどのようなメリットがあるのか、それらは示していません。観念的に“自衛隊頑張っているから” と言っているに過ぎないと思います。
自衛隊を国の最高法である憲法に明記するということは、国会や内閣、最高裁判所などと同様に、自衛隊を憲法上の極めて重要な機関に位置付けることになります。そうなると、財政的にも際限なく措置をすることになるだろうし、自衛隊の活動も海外への進出や、他国との共同作戦なども何の縛りもなく行われることが予想されます。
また、現在でも自衛隊の定員は定数に足りない状況ですが、憲法上の機関となれば定数を満たすために例えば徴兵なども検討されるかもしれません。憲法は、基本的人権の尊重を基本原理にしていますが、この人権保障は「公共の福祉」によって制限されるとされています。自衛隊明記により、憲法上の重要な機関となれば、自衛隊の任務や活動に必要なことは「公共の福祉」にかなうとして、国民の基本的を制限する根拠にもなりえます。
このように、自衛隊を憲法に明記することは、憲法の平和主義に反し、基本的人権の尊重という基本原理からも立憲主義からも逸脱したものになることを押さえておくべきです。
2024年9月
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